7/12、オンラインにて「第12回マテリアル探索自動化・自律化人材育成セミナー」を開催します

DX化は世界的な流れであり,研究室レベルでも例外ではありません。それに対して、日本ではNIMS/RDEがあり、欧州ではNOMAD/FAIRmatプロジェクトにおいては電子ラボノートだけでなく語彙整備まで行う動きがあります。今回のセミナーではFAIRmatの基幹システムである電子ラボノートeLabFTWの研究室レベルでの実際の運用についてご紹介していただきます。(木野日織)

第12回マテリアル探索自動化・自律化人材育成セミナー

kino_hiori@@@nims_go_jpにご連絡ください。
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オンライン参加用urlをご送付致します。

「電子ラボノートを活用した研究データの一元管理とオープンマインドなカルチャー作り」

高須賀聖五 特任助教

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科物質創成科学領域

要旨

近年、データ駆動型研究の活発化により研究活動のデジタル・トランスフォーメーション(研究DX)が加速している。これにより、今まで以上にデータの重要性が高まり、”属人的な暗黙知”を”組織で共有可能な形式知”に変換できるかが鍵となっている。特に、実験ノートは実験データが詳細に記録されている共有財産であるが、そのほとんどが紙媒体でありリアルタイムでの情報共有が困難なため、属人的な暗黙知になり易い。また、データ駆動型研究へ活用するにはデジタルデータに変換する必要がある。そこでキーワードとなるのが”電子ラボノート”と”カルチャー”である。電子ラボノートは、従来の紙のラボノートを電子化したもので、実験・分析結果を一箇所に記録・保存でき、いつでも簡単に共有が可能となる。これにより、研究データの一元管理および容易なデータ共有による研究活動の効率化が期待できる。また、タイムスタンプ機能によるデータ改ざんの抑制、実験条件に紐づいたファイルの保存、化学構造の描画・閲覧およびテンプレートや表の複製が可能という紙媒体にはない機能を多く有する。一方で、電子ラボノートの導入およびデータの移行は手間とコストがかかり、システム障害が発生した場合のリスクやデータプライバシーの管理、ユーザーの技術習得の必要性など、様々な課題が存在する。そのため、導入から運用までの戦略を立てることが求められる。さらに、カルチャー作りも重要な要素となる。電子ラボノートで共有されるデータには失敗データも含まれる。データサイエンスの観点からは非常に有益であるが、実験者からすればあまり共有したくない情報である。この心理的ハードルを下げるためにも日頃からコミュニケーションの見える化を意識したオープンマインドな環境を作る必要がある。オープンマインドなカルチャーのもと電子ラボノートを使用することで、研究DXがより推進されると考える。本セミナーでは、電子ラボノートの導入へ向けた取組みやオープンマインドツールを用いたデータ共有を含む具体的な使用例、APIを用いた実験データの活用について紹介し、ベンダーの利用やクラウド管理といった維持管理方法についても触れる。