12/5(金) 有明コロシアムにて「第3回AIロボット駆動科学シンポジウム」を開催しました

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参加費無料 / 先着200名

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12月5日(金)有明セントラルタワーにて、長藤PLと牛久GLが発起人として理事を務めるAIRDS(AI Robot-Driven Science Initiative)による「第3回AIロボット駆動科学シンポジウム」が開催されました。一般社団法人化後、初のシンポジウムとなった今回は、AIRDSの組織としての成長と展望を示す節目の開催となり、当日は200名を超える参加者に加え、来賓の方々にもご臨席いただきました。講演会、パネルディスカッション、展示およびポスター発表、交流会など、多彩なプログラムが展開され、組織の役割と意義を改めて示す場となりました。

第一部 開会挨拶「一般社団法人AIロボット駆動科学イニシアティブの始動」

開会の挨拶で牛久GLは、当イニシアティブの一般社団法人化を喜ぶとともに、法人化後初めてのシンポジウム開催に大きな意義があると述べました。その後、高橋代表理事は、AIとロボットを活用した科学研究により複雑系の解明や社会課題の解決を加速し、日本発のグローバルムーブメントを創出するというビジョンを示しました。さらに、国内外のネットワーク構築や政策提言、産業界との連携を重視し、2050年に向けた科学と社会の変革を目指す姿勢を述べました。

開会挨拶

牛久 祥孝 氏

理事挨拶

高橋 恒一 氏

来賓挨拶

来賓の挨拶で、渡辺様はAI・ロボット技術の進化には「産官学民金」の連携と「人・物・金・仕組み」の経営資源の最適化、さらに実用化の課題克服が不可欠と指摘し、次の2年間でオールジャパン体制の構築を呼びかけました。中澤様は、国家戦略「AI for Science」と本イニシアチブの活動が一致しており、産学官の緊密な連携で科学研究の加速が期待できると述べました。服部様は、マテリアル分野のAI駆動科学が産業競争力維持の鍵であり、技術革新の統合や国際協働で強靭な研究開発エコシステムを構築する重要性を強調しました。

第二部 招待講演「AIロボット駆動科学の最前線」

「2020s 特定の領域で実用化し社会課題を解決」

夏目氏は、AIとロボット技術を用いて、従来は人手に依存していた細胞医療の生産プロセスを自動化するアプローチの全体像を示しました。ナチュラルキラー細胞の培養最適化に関しては、高精度ロボットとAIの協調により生産効率を大幅に向上させうることを明らかにし、期間短縮とコスト低減の具体的な見通しを提示しました。さらに、こうした技術的進展が難病治療の普及を後押しし、約61兆円規模の新市場を形成し得る点を指摘するとともに、日本発技術の国際展開に向けた潜在力についても示しました。

「科学実験自律化に向けたロボット粉体操作」

濱屋氏は、OSXにおける科学実験ロボット研究の全体像を概説し、人と同一の環境および道具を用いながら、状況変化に即応できる柔軟なロボットアーキテクチャの設計思想を示しました。粉体操作の自動化に関しては、Sim-to-Real技術を活用した高精度計量、柔軟機構と視覚制御を組み合わせた粉砕プロセス、さらに形状可変ハンド「ScooHand」による効率的な搬送手法など、具体的な技術的成果を提示しました。これらの取り組みを通じて、実験室自動化の高度化に向けた今後の展望を論じました。

「BioSkillDX:ライフサイエンス実験作業の暗黙知獲得と作業支援」

佐藤氏は、ライフサイエンス実験における熟練技術者の技能継承や再現性確保に関する構造的課題を整理し、とりわけ実験手順書に明記されない「暗黙知」の重要性を指摘しました。この暗黙知を体系的に把握し、AIによる理解を可能にする基盤研究として「Fine-Bio」を構築しており、プロトコルに内在する多層的情報の記録・解析およびAI評価の取り組みについて概要を示しました。さらに、こうした知見を踏まえて、熟練者の技能をAIに獲得させる新プロジェクト「BioSkillDX」の立ち上げ計画を提示し、その展開可能性について見通しを述べました。

「ロボット実験と自律実験支援ソフトウェアNIMOの連携による蓄電用電解液材料の自律自動実験探索」

田村氏は、電池電解液探索におけるロボット実験の効率性および信頼性に関する課題を整理し、従来は人手介在によるサイクルの遅延やヒューマンエラーが生じていた点を指摘しました。これらの課題に対応するため、探索AIとロボットを連携させた自立実験支援ソフト「NIMO」を開発し、無人での実験サイクル運用を可能にしたことを報告しました。さらに、実証実験や国内外での導入事例を紹介しつつ、将来的に多様な装置の自立化を通じて研究者の創造活動を支援する展望を示しました。

第三部 パネルディスカッション「AIロボット駆動科学のへの期待」

モデレーター:林 和弘 氏
パネラー:内川 英明 氏 / 江村 克己 氏 / 光山 統泰 氏 / 神田 元紀 氏 / 金井 良太 氏

モデレーターの林氏が口火を切り、AI for Scienceとメタサイエンスの視点から、科学変革やコミュニティ・制度の再構築について議論が行われました。内川氏は宇宙実験の自動化と地上社会との連携を示し、江村氏は新組織の文化形成や社会実装の重要性に言及しました。光山氏は暗黙知の形式化と大規模実験拡張の課題を説明し、神田氏は多分野の知見共有と技術進歩の観点を紹介しました。金井氏はリサーチDXやクラウド化実験など、AIロボット駆動科学の事業・技術的貢献と国内課題について提示しました。

全体として、AIや自動化による研究効率化・標準化、産業化・社会実装、組織や評価の見直し、異分野連携やクラウド化実験など、多角的な視点から活発な意見交換が行われました。

最後に司会の長藤PLは、非常に難しいテーマであったものの「発散することに意味がある」という言葉が象徴的であると述べ、多様な人が集まり議論を継続できる場の重要性を強調し、パネルディスカッションを締めくくりました。

第四部 展示・交流セッション 「AIロボット駆動科学の共創」

12件の展示ブースと14件のポスター発表に、多くの来場者が足を運び、活発な議論が交わされました。長藤PLと牛久GLがマイクを手に各ブースを巡り、発表者へのインタビューを通じて会場を一層盛り上げました。最後にご来賓の渡辺様より、「チームの力で潰れない事業化を目指そう」と力強い激励のご挨拶をいただき、各理事も総括コメントを述べ、盛況のうちに会を閉じました。

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